【MARS160・現地レポート10/6】
宇宙服が届いた日の画像。

新しい火星用宇宙服が地球から届いた。クリスマスの朝の子供のように、最高のプレゼントを待ちわびていた。エアロックから荷物が室内に運び込まれるのを待っていた。
「新品の宇宙服が到着したぞ!」と、ジョンが満面の笑顔で叫んだ。

荷物は目にもとまらぬ速さで解かれ、だれもがその新しい宇宙服の「品定め」をした。新しい宇宙服が光り輝いており、新品の匂いを放っていた。この宇宙服は各クルーメンバーの体に合わせて作ってあるのでピッタリフィットする。

この宇宙服は私たちにスーパーパワーを与えてくれる。その感覚は宇宙服を着るたびに感じる。責任感、スタミナ、集中力を与えてくれる。そのうち、普通の衣服みたいに快適で体になじむように快適になるでしょう。

でもこれは理想的な考えだけど、本当にそうでしょうか。火星用宇宙服の基本的な条件を考えてみましょう。まずは、火星でも呼吸可能な空気を供給し、温度を調整し、水と食料を供給し、排出物も管理可能で、さらに、身体の生物学的なデータも収集し、通信機能を備え、他のクルーメンバーを追跡し、音声やビデオデータを保存できる、等々の機能が必要でしょう。
これら以外の他にも、さらに多くの機能を備える必要があるでしょう。火星表面で様々な作業を行うために、宇宙服は柔軟な構造であり、適度の軽く、宇宙からの放射線から体を保護し、耐久性も高い必要があります。最長でも10時間から12時間は機能すべきだし、火星土壌の微細な砂粒にも耐えられる必要がある。この砂粒の影響で宇宙服のベアリングに問題が発生しないようにする必要がある。

理想的には人間に付着する細菌や体臭を自律的に除去できるセルフクリーニング機能があるといいね。おそらく、いつの日か、「スタイリッシュな火星宇宙服」なんて言葉が広まるかも。でも今後20年の間には、そのような見た目の感覚は宇宙服には考慮されないでしょう。

もし私が多くのことを求めすぎていると思うなら、本当の要求条件を知ったら驚くでしょう。実際は宇宙服に要求される条件はもっともっとたくさんある。

最初の火星宇宙飛行士が火星で働いたときには、多くの体験から、宇宙服に対する多くの改良点が求められるでしょう。そのことから、今回のMARS160模擬居住実験は大変重要な理由なのです。

今回の実験の中で行う屋外活動(EVA)から得られる貴重なデータが、実際の宇宙服の設計に反映されて、より良い宇宙服が開発されると大変うれしい。膨大な宇宙服要求条件に、わずかながらの情報が反映されれば、やりがいがあるというものです。