【MARS160現地レポート・11/25】
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11月25日
ユースケの世界の「ロスト・イン・トランスレーション」

生意気な笑いと優しいまなざし、これが日本から来た副隊長のユースケの印象。
ユースケ・ムラカミは北九州で生まれ、横浜で育った。子供時代の英雄は書籍「怪盗ルパン」に登場するアルセーヌ・ルパンだったとのこと。話はスマートで創造的な泥棒についてであり、悪者から金品を奪い、貧しい人々に分け与えるというもの。ユースケは芸術的な美の意味からもルパンが好きだった。ルパンは金持ちから絵画を盗み、その絵を世界中の人々に見せた。
ユースケの生命に対する見方は複雑でユニークで驚かされる。もし彼がタイムマシーンを持っていたなら、石器時代に生きてみたいとのいこと。なぜならその時代の人間は真の人間であり、生き延びるため、そして生活を楽しむために物事を想像し発明をしていたからだ。ユースケは道具が大好きであり、道具ができる過程も好きである。
彼はに、住宅や宇宙ステーションは人間にとって最大の道具である、と述べている。子供の時から石でナイフを作り、大人になってから建築で修士の学位を取得した。彼の生活すべてを変えるチャンスの瞬間が訪れ、まさにいま、彼の回りにそれが起きている。
彼は、つねに極限の状態でこそ創造的になれると常日頃考えていたが、バイオスフィアⅡのことを聞いたのちに、インターネットで似たようなプロジェクトが始まることを知り、現在そのプロジェクトに参加することができた。
あるとき、日本南極越冬隊のことを知り、極限環境の中で人間がいかに創造的になれるのかを研究するために、博士号学位取得を止め、南極基地に行った。28人の隊員と一緒に南極の昭和基地に滞在し、科学と工学の研究に15か月間を費やした。
クロストレーニングコースに合格し、ユースケは地球物理学担当クルーに任命されました。南極での極限で困難な体験から、長期間のミッションの場合、調和が大変重要であることを学んだ。なぜならそのことがクルーの安全と健康を保つ基礎になるからである。
さらに、その調和はクルー同士の慣行、伝習を作り出す。慣行や伝習は喜びの瞬間をもたらしてくれる。
南極滞在で彼が学習した2番目の点は、各クルーメンバーは主観的であり、且つ同じ時間を過ごしているにもかかわらず、頭の中では異なる時間軸、時間尺度で考えている、ということである。個々人が勝手に行動していても、実際は全体の人間性を考えて行動しなければならない。
ユースケが学習した3番目の点は単純かな? おいしい食事、よく笑い、そして良い睡眠。
これらの三つのことによって、人間は偉大であり続けられるしロボットになることを防げる、ということ。それ以来、ユースケの宇宙分野へのかかわりはより深くなり、彼の生活を変えてしまった。ユースケは宇宙建築を作ることを夢見ている。宇宙建築は石器時代の建築に似ている部分がある。石器時代では建築用の資材は限定されいたが、でも創造性とリスクは無限であった。
ユースケはどのようにしてMars160に加わったのか? ユースケは以前MDRSに滞在した経験を持つ日本人が書いた本を読んだ。そしてわずかその6年後にMars Arctic365に申し込む機会を得た。火星模擬基地は地球と未来の火星の生活の中間に位置する。彼はその機会に魅了され、最終選考者に選ばれ、結果的にMars160のクルーに選ばれた。
我々の副隊長は驚きでいっぱいである。彼とは毎日接している。想像してみて、巧みな建築を持ち込み、多くの道具を基地に持ち込み、石器時代に生きることを夢想し、そして人間性の側面を失ってロボットにならないこと常に心配している。
結局、ユースケとインタビューした時間はすでに2時間となるが、それでも彼の内面は依然として謎である。
ユースケ曰く、「生きることに説明は要らないですね」